シン・ゴジラ鑑賞記
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東宝WEB SITEより
ニッポン ゴジラ
現実 対 虚構
『ゴジラ』は好きだけどフィギュアを買うほどじゃなく、
『エヴァ』はTVシリーズを数話、
『進撃』は1話も観ていない、
けれど自衛隊好きな記者が観た『シン・ゴジラ』レビューです。
※ネタバレを含みますのでご注意ください
野村萬斎ゴジラ
脚本・総監督を『エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明。
監督・特技監督を『進撃の巨人』の樋口真嗣が担当し、東宝が12年ぶりに制作したシン・ゴジラ。
今作のシン・ゴジラは着ぐるみではなく全てCGです。
CG制作は『STAND BY ME ドラえもん』『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどで知られる映像製作会社・白組が手掛けており、狂言師の野村萬斎が演じる動きをモーションキャプチャーしてシン・ゴジラへ反映させています。
絶対観るべき
ハリウッド版も含めた歴代ゴジラのなかで最大であるにもかかわらず、あるのか無いのかわかんないぐらい小さいけれど狂気を感じさせるぶっ飛んだ眼。
このシン・ゴジラがどんな大暴れっぷりをみせるのか、ワクワク期待をしながら映画館に向かいました。
結論から言いますと、とてもオモシロかったです!
もう一度劇場で観たいし、ブルーレイが発売されれば、買います!!
ただし、中学校生以下の子どもさんには、延々続く会議の場面がツライかも知れません。
ゴジラの命名
怪獣モノ映画で初めて見た物体(生物)を見て
『〇〇〇!!』
と叫ぶシーンで毎回思うのですが
??『ナゼ、ナマエヲシッテイルノダ??』??
今作では、この生物を研究していた科学者マキ元教授のメモに「呉爾羅」と記載されていたことから「ゴジラ」と呼ばれるようになります。
1998年ハリウッド版「Godzilla」で、沈没船から救出された船員が
『ゴ・ジ・ラ』
とつぶやくよりはマシですが、そろそろ登場人物が劇中で命名してもいいのではないかな?
あれは何だ!となったときに、いっそのこと観客がスクリーンの主人公に合わせて
『ゴジラ~!』
と叫んじゃうようにするっていうのはどうでしょう?
長谷川博己がレッドカーペットでやったように、観客も一度は大声で『ゴジラ〜っ!』と叫んでみたいはず!
そうすれば、中には宿敵カメ怪獣の名前を叫ぶ不届き者がいたりして、結構盛り上がるんじゃないかと思いますが。
タイトル「シン・ゴジラ」の「シン」とは総監督の庵野秀明自身が付けたのもので、今まで誰も見たことのないゴジラをコンセプトに、「新」しいゴジラ、「真」のゴジラ、「神」のゴジラといくつもの意味が重なります。
「新ゴジラ」より意味シンでいいかもしれませんが、シンと言うとタイガー・ジェット・シンを思い浮かべるのは記者だけかな?
長い会議シーン
記者だけでなく、今作品をご覧になる皆さんが、シン・ゴジラの暴れっぷりを期待していたでしょうが、ゴメンなさい。
シン・ゴジラが東京をブッ潰している時間よりも、突然現れた巨大生物への対応に右往左往する内閣官房での会議のシーンのほうがずっと長いぞ!長すぎる!!
とはいえ、リアルな描写と目まぐるしく変わるカットがまるでドキュメンタリーのようで、ストーリーにどんどん引き込まれていきますし、内閣総理大臣を演じる大杉漣のコミカルな演技に吹き出すことが何度もあって十分オモシロイのですが。
シン・ゴジラは形態変化する
そうなんです!
東京湾に出現したときが第1形態。
東京湾から上陸した、サメの一種のラブカ(ウナギザメ)と中国の祭に出てくる龍を足して2で割ったような姿が第2形態。
その魚のようなでっかい目に事態が飲み込めなかった記者は
『あなたはいったい、どなたでしょうか?』
『こいつとゴジラが戦うのか?』
と勘違いしちゃいました。
そこから最終体の第5形態まで進化するのですが、なにせ第2形態がオモシロすぎるし、特撮がチャチで緊迫感が損なわます。
118.5メートルものシン・ゴジラをいきなり出現させるよりも、進化させていくことで現実味を持たせたかったのかもしれませんが・・・。
暴れない
第2形態で上陸したときも、最終形態の第5形態で再上陸したときも、なぜか河川・道路に沿って移動するだけです。
街をナナメに突っ切って、ビルも東京タワーもぶっ潰す!
なんてことはしません。東京スカイツリーも出てきません。
といっても、あんな巨体が街を移動するだけでも、相当な被害は出るのですが。
旧態依然とした怪獣映画とは違います。
首都壊滅
自衛隊の攻撃では【駆除】されず、米軍のB2爆撃機からバンカーバスター(大型貫通弾)で攻撃されたあと、いきなり口からも背びれからもシッポからも超強烈な破壊光線を発射するようになり、あっという間に首都東京を放射能と火の海にして壊滅させてしまいます。
記者は火の海となった首都東京の映像に、首都直下型地震がオーバーラップして大きな恐怖を感じました。
こにシーンが心底怖かった。
ヤシオリ作戦
自衛隊の総力を挙げた、シン・ゴジラとの戦いっぷりは迫力満点!
架空の超兵器は一切登場せず、現実の車両・航空機火器・弾薬でシン・ゴジラと戦うシーンはあたかも自衛隊PR映像のようで、無線交信もバンバン入って臨場感を高めます。
でも、エヴァまんまの名称「ヤシオリ作戦」で、シン・ゴジラへ突っ込むN700系新幹線と山手線・京浜東北線が、CGで描かれた自衛隊の10式戦車や攻撃ヘリAH-64Aに比べクオリティが低くすぎて、いかにもオモチャという映像に笑ってしまいました。
しかし、今作品の超注目シーンである、シン・ゴジラを固定(下敷きに)するために自衛隊と米軍が高層ビルを破壊するシーンは圧巻です!!
ここだけはハリウッドのVFXに引けをとらない迫力ある映像で、思わず息をのんで見入ってしまいました。
でもそのあとが悪い。
倒れ込んだシン・ゴジラの口へコンクリートポンプ車で注入する血液凝固剤が一滴もこぼれ落ちず全て注入完了!!
そんなんあり得んやろ~!
と心の中で叫んでしまいました。
従来のゴジラ映画のごとく、血液凝固剤はミサイルで撃ち込んで一件落着!みたいに仕上げれば簡単だったのでしょうが、リアルさにこだわり過ぎて馬脚を現してしまいましたね。
陸上自衛隊が誇る1台6億3000万円のNBC偵察車も登場していたようですが、見逃してしまいました~!
そう言えば、一番最初にシン・ゴジラを偵察したヘリは、陸上自衛隊の特別輸送ヘリ「EC225」だったような。
スーパーピューマの愛称を持つ同機は、国内の要人や来日した各国の国賓や首脳の移動に使われる陸自の特別輸送ヘリ。
こんな使われ方アリなのかな?
自衛隊の装備をお披露目するために登場したようで、大人の事情なのかな。
石原さとみの破壊力
羽生結弦似で331.00点をつけてあげたい程の素晴らしい演技の長谷川博己、無表情で核心を突く発言の市川実日子、コミカル演技の大杉漣、相変わらずクールな竹野内豊、鉄の女余喜美子など、すばらしいキャストが自身の持ち味を発揮して作品の完成度を高めていました。
がしかし、誠に残念ながら、上院議員の父を持つ日系3世で10年後には米大統領になろうかという米国大統領特使役で、NY留学(1ヶ月ですけど)や語学レッスンのCMに出演した経歴がありながらルー大柴風日本語英語で「ガッジーラ」と言い放ち、シン・ゴジラに勝るとも劣らない破壊力で全てをブチ壊してしまった石原さとみには失望しました。
ネットでも樋口真嗣監督がキャスティングした石原さとみの英語力には賛否両論で、
『監督がえらんだのだからそれでいい』
という意見もありますが、樋口真嗣監督シンパではない記者には通用しないし、足を運んだ観客の大多数もそうでしょう。
個人的には、伸長もある北川景子が適任だったと感じましたがいかがでしょうか。
音楽
「宇宙大戦争」など懐かしい曲が使われているのは、エンドロールの最後まで楽しめてゴジラファンには良かったかもしれませんが、なにせ「シン」なのですから、より迫力ある新しい音楽でシン・ゴジラの恐怖を増幅して欲しかったです。
総論
今作品『シン・ゴジラ』は、想定外で未曾有の危機が出現したとき、日本がどう対応できるかを描いたポリティカル(政治)ドラマです。
記者のような、いち市民がどうのこうの出来る問題ではないかもしれませんが、『ただちに影響はない』『アンダーコントロール』というだけでない、国民を守れる政府を願いつつ、凍結から目覚めるであろうシン・ゴジラの次回作を大いに期待します。