燕湯はやっぱり熱かった!上野燕湯入浴記
湯が熱いことで有名な、東京・上野の燕湯。
『次は早朝に入って足先が痺れるかどうかを検証しようと思います』
と締めくくった記事から1年近く経ってしまい、申し訳ありません。
『昔は設定を50℃で沸かしていたが、最近はそんなに熱くはできないので、早朝は48℃に設定・・・』
と番台のおばさんが言っていた48℃の熱い湯に入ろうと、
営業開始の早朝6時に間に合うように上野へ向かいました。
《いざ上野へ》
御徒町駅北口すぐのアメ横も、昼間の喧騒がウソのように静まり返っています。
駅から歩いて2分程度なのに、
燕湯に着くのが6時を少しまわってしまい、
すでに並んでいたお客さんたちがゾロゾロと入店していました。
入口の注意書きも、
以前は《汚れている方お断りすることがあります》でしたが、
《汚れのひどい方・飲酒している方入浴お断りします》
と、より具体的な内容にかわっていますね。
この近くの住民から『路上生活者が入浴することを嫌って燕湯に通うことを止めた』という話を聞いたり、実際にそれらしい方が入浴している場面に遭遇したこともありましたが、不衛生な状態で入浴することを防止するためでしょうか。
でも、どの程度の汚れでお断りされちゃうのかは不明です。
《カランの湯も熱い》
暖簾をくぐり、番台で入浴料460円を払います。
この日は手ぶらだったので、フェイスタオルを20円で借りました。
まわりを見わたすと、脱衣所と浴室の両方で10人前後のお客がいますが、記者のように熱い湯を試しにきたであろう大学生風の3人連れや、常連とおぼしきオヤジさんも数人います。
服を脱ぎガラス戸を開けて浴室へ入ります。
浴槽はジャグジー風呂と通常の湯船の2種類があります。
マナーを守らない不届き者がいないか見張っているのか、常連さんBが記者に気付いてジーっと注視してきます。
粗相をしないように気を配りながら、まずカランの湯でかけ湯をしようとしますが、これが熱いのなんの。
水でうめなければ、とてもじゃないけど浴びることができません。
そこで桶に入れたお湯の温度を計ってみると【45.7℃】です。
う~ん、これは湯船の温度が期待できますね。
《48℃だよ!》
なんとかかけ湯をしたあと、ジャグジー風呂の温度を確認しようと湯温計へ近づくと、別の常連さんCが
『48℃だよ!』
と、江戸っ子らしく吐き捨てるように教えてくれました。
湯温計を見ると、ほんとに【48℃】を指しています。
前回が【44.6℃】だったので、
これは相当熱い、熱いぞ!!
こんな未体験ゾーンの熱湯に入るには、身体が温まる前のほうがいいと思い、大胆にも今日はまだ誰も入っていないジャグジー風呂から入ってみることにしました。
期待と不安が入り混じりますが、心頭を滅却すれば火もまた
熱くない熱くないと暗示のように頭で繰り返しながら、そろりそろりとつま先から湯に浸けて行きます。
ボコボコと湯面ではじけるジャグジーの泡は、さながら煮えたぎる熱湯のようで、まるで茹で上げられる食材になったかのような気分です。
足の指を浸けたときは
『あれ?このままイケちゃうの?』
という感じでしたが、
弁慶の泣き所を過ぎたあたりで指先から脹脛(ふきらはぎ)にかけて火傷したような強烈な痛みに襲われ、思わず
「アッチャ~~ッ!!」
と叫びながら電光石火の勢いで足をシュパっ!と引っ込めてしまい、隣の湯船の常連さんBに
『ふっ・・・』
と横眼で笑われてしまいました。
あへ、お恥ずかしい・・・。
仕方がないので作戦を変更して、まずは普通の湯船から攻略することにしました。
《44.8℃でぬるいって》
波を立てて常連さんBにお湯がかかったりしないように注意しながら、そろりそろりと足先から入っていきますが、湯に浸かる途端にビリビリ痺れてます。
思わず息を止めそうになりますが、頭のなかでプチッと血管が切れてしまわないように、静かに呼吸しながら浸かっていきます。
なんとか肩まで浸かったものの、全身の皮膚がビリビリと痛みます。
常連さんBに
「いつもこんなに熱いんですか?」
と尋ねると
『今日はぬるいんだよ!』
と超強気な返答をされてしまいました。
湯温をG-SHOCKで計測したところ、
【44.8℃】!!
相当熱いんですけど、コレでぬるいとは・・・。
《観察してみる》
一旦湯から上がって、常連さん達や他のお客が熱湯に浸かる様子を観察したかったのですが、
燕湯には湯船のふちに座らないというルールがあるため、我慢して湯船に10分間浸かったままで観察してみました。
その結果、普通の湯船に浸かる時間は、常連さん達でも長くて5分程度と判明。
燕湯初体験らしき大学生風の3人連れは、歯を食いしばりながらなんとか入るものの、ゆとり世代の若造には耐られないようで、肩まで浸かるとすぐに逃げ出すように湯から飛び出していきます。
ゆっくり出てくれないと、お湯が波立って熱いよーぅ。
48℃の温度計に恐れをなしたのか、ジャグジー風呂に入るのは常連さんだけで、他に近づく人すらいません。
常連さんAと常連さんBのお2人がクロスオーバーして、湯船のふちに両手をかけるポーズで浸かっている場面をじっくり観察すると、
ジャグジー風呂に浸かった時間は、常連さんBが約50秒、常連さん皆さんが一目置いている常連さんAですら約60秒でした。
そんな訳で、洗い場は人でいっぱいだけれど、通常の湯船はたま~に人が居る状態で、ジャグジー風呂は常連さん達だけが長くても1分しか入らないのでガラガラ状態です。
状況調査も十分、機は熟しました。
常連さん達のジャグジー風呂1分に挑戦です!
《ジャグジー実測49℃!》
常連さん達が口を揃えて
『慣れだよ、慣れ』
と言うので、観察で10分間も浸かって全身がポッカポカに温まった状態で、ジャグジー風呂に入ることにしました。
しかし、今回も足を湯に入れた瞬間にヤケドをしたかのような痛みに襲われ、またまた飛び出してしまいました。
『う~ん、これは手ごわい!』
こんなに熱いくては湯に浸かりながら湯温を計ることは絶対不可能だという結論に達したため、G-SHOCKだけを湯に差しいれて計測することにしました。
その結果は、
ジャジャジャ〜ン!【49℃】!!
設置してある湯温計は目盛が2℃単位と結構アバウトなので、G-SHOCKのこの計測結果で間違いないでしょう!
めまいを起こしそうでしたが、わざわざここまで来て入らないわけにはいかないので、身体を水で冷やしてから入ることにしました。
他のお客にかかって迷惑をかけないように、隅っこでカランの水を足指先から胸の下あたりまでかけていきますが、身体が相当温まっているのか全く冷たく感じません。
が、テキトーに冷やしてから、49℃のジャグジー風呂に足を差し入れていきます。
冷やしたことが功を奏したのか、皮膚に痺れるような刺激はあるものの、痛みはまだ感じません。
よし!とばかりに肩まで一気に浸かりますが、湯の中で無数に弾けるアブクの刺激が、次第に身体を針で刺すような痛みに変わっていきます。
壁時計の秒針はまだほんの少ししか動いていないのに、
「うぐぐっ・・・」
膝から下の部分(下腿)は、もうすでに熱さを通り越して激痛に変わっています。
最初は両腕を湯の中に垂らしていましたが、ジャグジーの泡で身体が揺さぶられるので、常連さんと同じように両腕を伸ばしてふちを掴んでみました。
すると、体勢が安定するだけでなく、熱さに耐えかねて失神しそうになっても、なんとか熱湯から脱出できそうで安心感がうまれます。
常連さんのとっていたフォームには、こんな理由があったのかも。
しかし、全身を針で刺されたような強烈な痛みを我慢できたのは、30秒が限界でした。
特に下腿はほんとうにヤケドしたかのように痛んで、燕湯をでたあとお昼ごろまで皮膚がヒリヒリしていました。
草津温泉も湯もみの後の温度は48℃と言われ、熱い温泉として知られていますが、湯もみによってコロイド状になった「湯の花」が皮膚表面を覆うため、同温度の沸かし湯より刺激が少ないと言われています。
それに対してここ燕湯のジャグジーでは、お湯が激しく攪拌されて皮膚表面に境界層ができないため、ストレートに熱く感じます。
熱烈に熱い燕湯、最強銭湯に認定!
何時ごろまでこの熱い湯に入れるのか、番台のおばさんにお聞きすると、
『早朝は常連さんのために熱くしているが、常連さんが帰ったあと(7時ごろ)は他のお客が入れないため、温度を2℃ほど下げている』
とのことでした。
というわけで、最強銭湯を体験したい方は、7時までに燕湯へどうぞ。
《 熱傷》
熱傷の程度は温度と接触時間に関係があり、高温度なほど短時間の接触で重い熱傷をおこしますが、
ある資料では
- 45℃では3時間以上
- 50℃では5分以上
で熱傷を負う危険があるとされています。
熱い湯に入るときは、熱傷や脱水症状を起こさないよう自己管理をしっかりしてください。